フッ素(関係の素材)が手に入りにくい

世界的にフッ素系素材の入手が困難になっている、という話。

中学校理科の「化学」(ばけがく)の授業で原子の周期表を習います。時代にもよると思いますが、ぼくは「水兵リーベ、ぼくの船・・・」の語呂合わせでした。左上から原子番号順に語呂合わせで覚えましたが、族(縦方向)も覚え方があるんですよね。第18族だったら「屁(He)こいて、寝(Ne)て、歩(Ar)かず、暮ら(Kr)す、キセ(Xe)ラドン(Rn)」とかね。

で、原子番号8番、語呂合わせでいくと「船」の「ふ」、すなわちフッ素が手に入りにくくなっている、という話。
フッ素は第17族の先頭に位置し、第一イオン化エネルギーが大きく、結合エネルギーが小さいので反応性が高く、酸化剤としては非常に強い部類に入ります。そして、化合物となった場合は、非常に安定した状態になり、長期間変質しないことから、耐薬品性や耐摩耗性といった耐久性が非常に高い傾向にあります。
そうなると、製造業的には非常に優秀な素材となるわけで、半導体製造装置や自動車、飛行機といったありとあらゆる部材から、ITに欠かせないガラスや光ファイバーなどの屈折率制御、はたまた歯科治療など、今やありとあらゆる場所で使われています。

そんな生活に欠かせないフッ素ですが、世界シェアの多くを占める3M社のベルギー工場が操業停止に陥っていると言われています。厳密にはフッ素そのものではなく、フッ素系不活性液体(3Mの登録商標「フロリナート」)ですが、コロナや戦争の影響ではなく(それらの影響がゼロということもないでしょうが)、環境問題としてベルギー政府が操業停止を命じたようです。

3Mベルギー工場停止、驚愕のインパクト ~世界の半導体工場停止の危機も:湯之上隆のナノフォーカス(49)(1/3 ページ) – EE Times Japan (itmedia.co.jp)

ちなみに、フロリナートの代替といわれている高機能性液体(3Mの登録商標「ノベック」)の製造はベルギー以外の国で継続されているようですが、特性的にも完全に代替できるわけではない(官能基や温度特性が違う)ので、半導体製造装置への影響は非常に大きく、ただでさえ停滞している半導体製造に追い打ちをかけるような事態になるかもしれません。いや、もう既にそのような事態になっていると思います。
高機能性液体の製造ラインの半分をフッ素系不活性液体の製造ラインにするといったことは当然のように検討・検証されていると思いますが、一夕一朝で行くはずもなく、果たしでどうなるのか。

ここ最近、あちらこちらの産業界からフォース・マジュール(Force Majeure、不可抗力)宣言が出されていますが、曲がりなりにも製造業の端くれに身を置くものとしては、ただでさえ半導体や樹脂、オイルが手に入らなくて大変なことになりつつあるのに、さらにフッ素系不活性液体まで手に入らないとなると…、あぁ、もう考えたくない!

これからの時代、半導体を使用するようなコンピュータは廃れて、再びギアとカムを使った計算装置の時代がやってくるのでしょうか。まぁ、ほんの半世紀前の戦闘機はそんな計算機を使って空を飛んでいたことを思うと、できないことはないかな。ロストテクノロジーになりつつありますが、ギア・カムで計算機を設計する技術を身に付けたほうがよかったりして。