種の話 その3

「自家不和合性」は本来、植物の持つ性質ではあるのですが、それを様々な方法を用いて純化していくと、同じ種から育った雄と雌では受粉しなくなり、これをさらに突き詰めると、同じ形質の雄と雌では受粉しなくなるそうです。
人間で例えると(遺伝的には親が同じ人同士でも子供が出来ますが)、親が同じ人同士では子供が出来ないようになり、先祖が同じ人とは子供が出来なくなり、さらには同じ人種(黄色人種とか)では子供が出来なくなるようなものでしょうか。もっともっと純化を突き詰めると、最終的には同じ形質(人類)とは子供が出来なくなるかもしれませんが、そうなると子孫を残すことができません。そんなことになったら、大変です。

「雄性不稔」は雄がない植物であり、本来であれば自然淘汰されて自然界には存在しえない植物のはずです。雄と雌により子孫を残す生き物は、どちらかが欠けたら子孫が残せないのは今更言うまでもないですね。それを意図的に存在させるためには、植物が本来持つ生理現象を狂わせたり、遺伝的に雄を持てないようにすることが必要になります。

商業ベースで植物を大量生産をするためには、これらを人為的に行い、効率よくF1品種を作り出すことが欠かせないのでしょうが、遺伝子レベルではある意味「欠陥」といえる植物となっているような気がします。 この「欠陥」を持った植物を食べ続けるとどうなるか…それはまだ、誰にも分かりません。
人間は食物を摂取すると、酵素などの働きによりアミノ酸レベルまで組成を分解するため、遺伝子レベルの欠陥などは気にする必要はないのかもしれませんし、なにかもっと違う理由で影響がでるかもしれません。
別にすべてのF1品種が上記のような問題を持っている訳ではないし、すべてを否定するつもりもありませんが、知識として持っておいても荷物にはならないと思います。

ソメイヨシノは、エドヒガンとオオシマザクラの一代交配種のため、種が出来たとしても純粋な二代目のソメイヨシノにはならないそうです。さらにソメイヨシノは「自家不和合性」のため、ソメイヨシノ同士ではほぼ種ができず、接ぎ木によって増やしていくそうですが、確かに種を売っているのは見たことがないな。

あまりに同じ地域の中で同じ植物(植物に限らず、動物であってもですが)を作り続けると、近親交配を繰り返すことになりますし、遺伝的にはあまりよくない可能性があります。植物が「自家不和合性」という性質を持っていることを考えると、あえて外部要素(遺伝子)を得ることで、自分を変えていこうとする手段なのかもしれません。

この世はまだまだ解明できない事象がたくさんあるのです。正しい答えなぞわかるはずもないことがたくさんありますが、知識は荷物にならんので、話のタネにどうぞ。

おろかな日々農芸

Posted by mattsun