スズムシ(鈴虫)を飼う

2021-11-24

 ようやく暑さもひと段落して、なんとなく秋の気配を感じるようになってきました。真昼間は相変わらず暑いですが、朝夕の空は「秋っぽい(飽きっぽい、ではない)なぁ」と思えるくらいにはなってきています。

 秋といえば鳴く虫たち。「虫のこえ」といった唱歌があるくらい、身近な音です。
 そういえば、虫が発する音を「声」と認識するのは世界的に見ても結構特殊な部類に入るそうです。詳細はわかりませんが、「音(ノイズ)」として認識するか「声(ボイス)」として認識するかは、脳の働きによって違うんですって。日本語にオノマトペが多いのもそのあたりが影響しているのかもしれません。

 というわけで、秋の虫の一角、スズムシの飼育についてです。

 ぼくはスズムシに限らずいろいろな生き物を累代飼育(*1)しているのですが、スズムシは他の生き物と比べても群を抜いて簡単だと思います。うまく飼育できれば、夏になったら「りんりんりんりん りいんりん」といい声を聞かせてくれるようになります。
 *1 累代飼育:何世代にも渡って飼育すること。

スズムシとは?

 秋の虫のもう一角に座するは、コオロギですが、スズムシもコオロギもバッタ目 コオロギ科。お互い親戚同士みたいなものなので、見た目も似ていますが、大きく異なるところもあります。コオロギは少しずんぐりむっくりした体型ですが、スズムシはシュッとしています。
 コオロギはバッタそのものの雰囲気があり、強靭な脚で跳んで逃げますが、スズムシの脚は実に頼りなく、ちょっとしたことでもげてしまいそうです。そのせいか、野生のコオロギはよく見かけますが、野生のスズムシはあまり見かけません。うちの庭では毎夏、コオロギの鳴き声はしっかりと聞こえてきますが、スズムシの鳴き声はほとんど聞こえてきません。弱肉強食の世界では勝てないようです。

 夜行性で昼間は岩陰や茂みの中に隠れていて、夕方になると活動を始めます。スズムシのオスは大きな羽を持ち、それをひろげて擦り合わせることで音を鳴らします。バッタ目なだけに雑食で、植物や虫の死骸(時には共食いも)を食べます。

スズムシの飼育

入手

 スズムシを飼育するには、まずスズムシを捕まえなくてはなりません。しかし、野生のスズムシはなかなか見つけられないので、ホームセンターで購入したり、スズムシを飼っている人から分けてもらうのが確実です。ホームセンターだとだいたい7月頃には成体が販売されます。また、最近だとネット通販も増えてきています。スズムシに限らず、成体のネット販売も増えてきているのでノウハウは確立しつつあるようですが、成体を小包などで受け取るのはなかなかリスクが高い(送る環境によっては死着している)ような気がします。特に昨今の猛暑は異常ですから…。

飼育容器

 飼育容器は、100均のプラスチックケースでも、ホームセンターの昆虫用飼育ケースでも、適当な容器でもなんでもOKです。
 うちでは幅400㎜×奥行740㎜×高310㎜の大き目の衣装ケースを使って飼育しています。数えたことはありませんが、200匹はいるんじゃないでしょうか。
 衣装ケースの場合、蓋を閉めると容器の中で空気の循環をしなくなり、気温があがったり、水分がこもったりして、いい環境ではありません。そのため、不織布や布の端切れを蓋替わりにかぶせましょう。
 容器の大きさに対してスズムシの数が多いと共食いを始めてしまいますので、それなりの広さは必要です。広さといっても立体的な広さとして捉えてもらえばいいので、木片や経木、植木鉢の破片などで表面積を増やしてあげればそこそこの密集度で飼育できます。

飼育環境

 容器の中に、厚さ5㎝程の土を敷き、その上に木片や経木、植木鉢の破片などを配置します。 土はスズムシ用のものが市販されているので、それを使うのが確実です。木片や経木なんかも一緒に市販されているので、それらを使えば間違いありません。直射日光の当たらない日陰、できれば室内の暑くならない場所に置いてあげましょう。スズムシを飼い始めたころ、日陰だと思って置いていた場所が時間とともに日が当たるようになり、気が付いた時には多くのスズムシが死んでしまっていたことがあります。昼間の2~3時間でしたが、それ以来、室内の風通しがよいところに置くようにしています。

 スズムシは脱皮を繰り返して成虫になっていきますが、脱皮のときは、木などにぶら下がって重力によって皮を脱ぎ落すので、そういった仕掛け(引っかかる場所)が必要です。また、隠れる場所も必要なので、立体的な配置を心掛けましょう。とはいえ、あまりに積み重ねると、不織布の隙間から脱走することがあります。細い脚のように見えますが、意外と跳躍力はあります。

 スズムシは黒いものを好むと言われています。炭を立てて置いておくと、いつまでもそこに張り付いています。写真にあるように、植木鉢の鉢底ネットにもいつも張り付いています。植木鉢の裏側は陰になるので、時々ひっくり返すと驚くほどに「密」状態で張り付いています。

 雑食性なので何でも食べますが、市販のスズムシの餌を与えておけば間違いありません。あとは水分が大切です。スズムシは水分を好みますので、霧吹きで植木鉢などに水を吹きかけておくと、喜んで舐めにきます。

 野菜くずなどを入れても喜んで食べに来ますが、飼育時期を考慮すると、生野菜を長時間外に出して置くのは得策ではありません。また、土に触れている部分から傷んできますので、串に刺すなどしてできるだけ土に触れないようにしておき、短時間で引き上げるようにしましょう。
 スズムシといえばキュウリのイメージがありますが、キュウリはそのほとんどが水分であり、傷むのも早いためあまり向いていないです。傷んだ水を飲むと、スズムシもお腹をこわします。うちではもっぱら、実のしっかり詰まった茄子を10㎜程度の厚さにスライスし、夕方に与えて夜に引き上げるようにしています。

最後に

 スズムシは比較的簡単に飼えますが、そこは生き物です。愛情をもって接してあげましょう。飼育ケースのそばで蚊取り線香や殺虫スプレーを使うと、一気に全滅してしまいますよ。

 これを読んで、楽しいスズムシライフを過ごしてもらえると嬉しいです。