不思議惑星 キン・ザ・ザ

2023-05-01

「クー!

ですべての説明が終わってしまう映画ですが、消化不良を起こす人も多そうなので、もう少し解説と感想を。
いつも通りにネタバレ要素ありにつき、「クー!」を知らずにこの映画を見たい人は回れ右で。

不思議惑星 キン・ザ・ザ 「КЙН-ЛЗа-ЛЗа!」
哀愁漂う中年オジサン(マシコフ)と、青年(ゲデバン)が、ひょんなことからある星に行き、そこで出会った二人の宇宙人(ウエフとビー)とさまざまな苦労を共にして、なんとか帰ってくるという、どこにでもあるようなストーリーですが、「さまざまな苦労」がこの映画の見どころです。登場人物にも悪人がいないので安心して見ていられます。いや、悪人はいると言えばいるのですが、みなそれぞれに間の抜けた人なので、安心して(?)見ていられます。悪人はいませんが、ひたすら騙され、苦労させられ…。でも最後は大円団です。

さて私、タイトルの不思議さとロシア映画だ、ということだけを耳にして、その他の情報が一切ない状態で見たのですが、これがなんともカルト的(いい意味でのカルト)で中毒性がありました。友人と会ったときに思わず「クー!」と言ってしまいそうなくらいの中毒性です。
当方、ロシア語を全く解しませんので、劇中の言葉がロシア語なのか宇宙語なのかもさっぱりわかりません。わからないので、なおさら中毒性を持つようです。よくわからない俗習に気の抜ける音楽がクセになります。
撮影に携わった人は、ただひたすらに面白くて楽しくて作ったんじゃないかと思ってしまいます。

地球とこの星では俗習や価値観が全く違うので(当たり前か!)、一度の鑑賞では内容が理解できません。とりあえず「クー!」です。わかったのは「クー!」だけ。劇場での鑑賞後、パンフレットを購入して読んだことで、なんとか俗習を理解できましたが、もう一度見る必要ありです。
1986年のロシア、当時はソビエト連邦なわけですが、ソ連と言えば常冬の平原、コルホーズにソフホーズ。氷の国の不愛想官僚にKGB。冷たい灰色の国だと思っていたのですが、どうしてなかなか。よくもまぁ、ソ連版の映倫が上映を許可したものです。実は職員も理解できなかったんじゃないでしょうか。

よくよく考えたら、ソ連は世界で最初に人工衛星を飛ばし、有人宇宙船を打ち上げた国です。それを踏まえると、宇宙の知識であったり、科学的根拠であったり、地球への望郷の念であったりが相当な重みをもっているように思えるのですが、それら一切合切を遠い宇宙に捨て去ってしまったような潔い作品となっています。

この映画、27年の時を経て、2013年には「クー! キン・ザ・ザ」としてアニメ映画化されているのだから、その勢いというかカルトぶりが改めてわかると思います。

え? わからない? だったら見るしかないでしょ。

クー!